まぁ、令月とすぐりに言わせれば?

いくらドッペルゲンガーが、自分の物真似をしようが、片腹痛い大根役者ぶりだったそうだが。

でも、恥ずかしながら、俺とシルナには区別が出来なかった。

あれ、令月とすぐりでなかったら、間違えて本物の首を落としていたかもしれない。

そう思うと、背筋が冷たくなるよな。

ドッペルゲンガーに、本気で本物のフリをされると…本物なのか偽物なのか、区別がつかない。

だったらいっそ、本物とはかけ離れた性格で、本物だったら絶対しないような言動で振る舞ってくれる方が。

ドッペルゲンガーかオリジナルか、見分けるのは楽だ。

…かと言って…俺の顔をして、勝手なことをされても困るんだけどな。

どうするよ?俺のドッペルゲンガーが勝手に現れて、勝手に街に降りて、空き巣や万引きを繰り返していたら。

俺の名前で、警察から逮捕状が出てしまう。

いくら「それはドッペルゲンガーの仕業で…」と訴えても、頭のおかしい人の言い訳だと思われるぞ。

悪夢だ、悪夢。

今のところあのドッペルゲンガーは、学院の敷地内から出ていないようだから、大丈夫だと思うが…。

でも、ドッペルゲンガーなんて結局は他人と同じなんだから。

何をしでかすか分かったもんじゃない。

オリジナルと区別が付きやすい、シルナ・天音パターンのドッペルゲンガーが出てきて欲しい、と思う傍ら。

勝手なことをされたくないという思いから、令月・すぐりパターンのドッペルゲンガーにして欲しい、とも思う。

そもそも、ドッペルゲンガーなんて出てこなかったら良いのに、というのが一番だけど。

多分それは無理だと思うんだよな…。

だって、残るドッペルゲンガーはあと三人分。

俺と、残る二人の教師でぴったり三人ってこと…。

願わくば、自分にも周囲にも被害を出さず、平和的にドッペルゲンガーにお引取り頂きたい…。





…と、思っていたそのとき。

「失礼しますよ」

噂をすれば、という奴か。

ドッペルゲンガーが現れるかもしれない、教師仲間の一人が、学院長室にやって来た。