しかし、「お前は呑気だな」と嫌味を言っても、何かが変わる訳ではないことも、もう分かっている。

考えたところで、どうにか出来ることじゃないしな。

ドッペルゲンガーがいつ現れるのか、もし現れたとして奴らが何をするのかは、まだ分からない。

だったら、ドッペルゲンガーが出てくるまでどっしりと構えて。

そうだな。チョコまんでも齧っていよう。

…俺、中華まんと言えば、肉まん派なんだけど?

まぁ、シルナにそれを期待するのが間違いというものだな。

仕方ない。チョコまんで妥協しよう。

「美味しい?ねぇ美味しい?」

「あぁ、うん。美味いよ」

「だよね〜!やっぱりチョコまんは、中華まんの頂点に立つ食べ物だよね!」

肉まんに謝れよ。

あんまんとピザまんにも謝れ。
 
中華まん過激派が聞いたら、激怒していただろうな。

シルナの代わりに俺が謝罪するから、許してくれ。

「…」

もぐもぐと、中華まんを齧りながら。

どっしり構えているつもりでも、やはり考えてしまうのは、例のドッペルゲンガーだった。

自分と同じ顔をした自分の偽物と対面するのが、どういうことか。

かつてレーヴァテインと対峙した経験のある俺は、よく知っている。

気持ち悪いよな。怖くもなるよな。

またあんな体験をするのかと思うと、気が重くなるのも当然だ。

それに。

これまで学院に現れた、四人のドッペルゲンガーを見て察するに。

今のところ、『オオカミと七匹の子ヤギ』によって生み出されたドッペルゲンガーには、二種類のパターンがあるらしい。

まず、最初に出てきたシルナと、次に出てきた天音のドッペルゲンガー。

あの二人のドッペルゲンガーは、自分がドッペルゲンガーであることを認めていた。

自分がドッペルゲンガーであることを認めた上で、本物にすり替わろうとしていた。

まぁ、それは無理だったけども。

このパターンは、案外退治するのも楽なのだと思った。

少なくとも、二つ目のパターン…令月とすぐりのドッペルゲンガーより、マシだ。

令月とすぐりのドッペルゲンガーは、まさに本物そっくりだった。

見た目の話じゃなくて、言動が、って話な。

これは非常に厄介なパターンだと思う。