あっ、とか。待て、とか。

言う暇もなかった。

新令月の小太刀が、旧すぐりの首を。

新すぐりの糸が、旧令月の首を、それぞれ切り落とした。

気づいたときには、旧令月と旧すぐり、二人の首が床に落ち…る、前に。

胴体から、ころんと外れた首が…霧のように消えた。

首が消えると同時に、胴体も後を追って消えてしまった。

…え、えっと…?

亡骸も残さず、消えてしまったということは…。

…最初に、かぼちゃケーキを持ってきた二人が、ドッペルゲンガーだったってことか?

本人達の口からは、一度もドッペルゲンガーの言葉は出なかったが…。

令月もすぐりも、何の躊躇いもなくお互いの首を切り落としたもんだから。

本当にあれがドッペルゲンガーだったのか、今更確かめようがない。

「え、えーっと…?」

…大丈夫か?

「…やれやれ。なーにが、相棒が決めたことなら文句ないよね、だ」

「こう言うの何て言うんだっけ…?横腹痛い?」

…多分、片腹痛い、じゃないか?

横腹が痛くなるのは、走ったときだろ。

「見抜くも何も、最初から分かってるじゃんね?」

「うん…。こんな馬鹿げた提案をする時点で、偽物だって分かってた」

「似てるのは見た目だけだね。中身は全くの別物。オオカミだかどっぺるげんがーだか知らないけど、俺達の目を舐め過ぎだよね〜」

…マジかよ。