ジョーになりたかった男(懺悔)

スパーリングを終えた直樹は自分の中でなにかが狂い始めていることに苛立ちを覚え、会長や廻りのトレーナーのアドバイスを聞こうともせず地下のシャワー室へと向かった。

冷水を頭からかぶりながら、目を閉じる。
調子は悪くなかった。いや、むしろ最高に近かったはずだ....

なのに倒せない?

なぜ?

パンチを出すのに一瞬躊躇したのか?
スパーリングの最初から最後までを思い出しながら自問自答していた。



直樹のスパーリングを見た会長とチーフトレーナーの田仲が直樹の異変に気が付いていた。