【第七話・途中まで】
◯電車の中(下校時)

★薔の回想

薔(咲き始めの桜のような彼女を、偶然見つけた)

ほのかと初めて会った時のことを思い返す薔
電車の中、薔に話かけられて驚いた顔をするほのか
ほのかの瞳の中で桜の花びらが舞う描写

★薔の回想終わり

◯久遠学院・3年生の教室

★薔の回想

輝夜「────いやぁ、今日も頑張ってるねぇ。噂のほのかチャン」

風月「なんでも初任務に向けて頑張ってるらしいよ?一緒に行く誰かさんに迷惑掛けないようにってこれまで以上に気合入れて授業に臨んでるんだって」

輝夜「あ、その話私も玉縁ちゃんから聞いた~。まー、誰かさんがいる以上、滅多なことは起きないだろうけどね。特に、あーんなにかわいらしい身体捌きのほのかちゃんが体術を披露するような状況には絶対ならないと思うんだけど」

風月「アタシもそう思う~。つーか、むしろそういう荒っぽいことが本業じゃんね、その誰かさん。ねぇ、薔様もそう思わない?」

薔「……今は神託巫女として研鑽を積むことに注力しているだけで、どちらも本業だ。それと、ほのかはいつも通り頑張ってるだけ……確かに今日は少し、気持ちが入りすぎているように見えるが」

輝夜「あら~、さすが薔様。直々にスカウトされた後進にしっかり目をかけてらっしゃるんですね」

風月「なにせ、薔様にとってほのかちゃんは特別ですものね。まぁ、それが後輩としてなのか異性としてなのかは私たちは存じ上げておりませんが」

薔「…………うるさい」

3年生の輝夜、風月、薔の3人が窓の外、グラウンドの様子を眺めながら話している
グラウンドでは2年生の体術の授業が行われており、ほのかが一生懸命琥珀に組み手を挑んでいるが、見事返り討ちにされていた
ニヤニヤした表情を浮かべる輝夜と風月
そんなクラスメイトの二人に、眉間に軽く皺を寄せながら返事をする薔

薔「何度も言ってるけど、別にほのかのことをそういう目で見てる訳じゃない」

輝夜「はぁ~、どう考えても恋だと思うんだけどなぁ。久遠家は大事な大事な坊ちゃんに情操教育施してないワケ?何度も言ってるけど、アンタのそれは間違いなく初恋なんだって」

風月「はー、ホントに。才能溢れる久遠の坊ちゃまが恋愛に関してはポンコツだなんて嘆かわしい限りよ」

輝夜「あ、例の課題図書は読み終わった?アレ読んでもピンときてないようなら、ガチでポンコツ認定するわよ」

風月「っていうかさぁ、いつになったらほのかちゃんに男だって打ち明けるワケ?自分の恋心すら碌に自覚できてないのに、なーに一人前に躊躇ってんのよ」

輝夜「これも何度も言ってるけど、ほのかちゃんにだけすんなり男だって言えない時点でアンタはあの子のことバリバリ意識してんのよ。なんでそんなことも分かんないのかなぁ」

輝夜と風月にボロクソに言われて薄らと青褪める薔
その後も2人はアレコレと言い続けているが、薔は手で耳を塞いでひとり考え込み始めた

薔(代々、高位神職者を輩出する名門一族・久遠)
(そんな久遠家の次期後継である私、久遠薔は────こんな姿をしているが、正真正銘の男だ)
(……とはいえ、今では学園関係者のほとんどが私の正体を知っている)
(そんな状況の中、彼女────佐倉ほのかを見つけたのは)
(折を見て、そろそろ本来の姿に戻ろうかと思案している最中のことだった)