「ついに壊れたのか?」

兜は、九鬼の手の中にある乙女ケースをちらっと見た後、灰色のディスクの上でインスタントコーヒーをつくり出した。

「まあ〜仕方があるまい。そいつは、数千年前の骨董品だ」

兜はつくったばかりのコーヒーを口に運ぶと、カップを九鬼に示した。

「君も飲むか」

「いえ」

九鬼は断ると、部室内に入った。

「図図…」

音を立てて、兜はコーヒーを啜ると、カップをディスクの上に置いた。

「最近…闇が濃くなったな。君がやつらを倒してから初めてじゃないかな?ここまでの濃さは」

「博士もそう思いますか?」

九鬼は、乙女ケースを握り締めた。

「今までは、普通の人間の精神を狂わすくらいだったが…。人ではないものでもでたか?」

兜は再び、カップに手を伸ばした。

「まだ…やつらクラスはいません。しかし、これ以上闇が濃くなったならば…今のあたしでは勝てないかもしれない」

「今は、君一人ではないのだろ?月の戦士は」

兜は、コーヒーをまた啜った。

「そうですが…」

九鬼は、視線をそらし、

「今までの敵は…少なくても人間に近かった。だけど…」

唇を噛み締めた。

「化け物…いや、悪魔かな」

兜はカップを口許から離さずに、九鬼を見つめた。

「普通の女子高生である彼女達には、刺激が強すぎる!あたしが前に出て、戦わないといけなくなるのに!」

九鬼は自らの乙女ケースに、目をやった。

「やれやれ」

九鬼の言葉に、兜はカップを下ろし、

「甘いんじゃないのか」

ため息をついた。

「その子達は、月影になった。月影とは、闇から人々を守る者。単なる変態を追い払う者ではない」