「結城!」

振り向き様の独身熊五郎のチョークが、教壇から投げられた。

「イテ!」

涎を流していたあたしの額に、チョークはヒットした。

その瞬間、あたしは長い眠りから覚めたように飛び起きた。

「い、今さら!再開!途中で投げ出しやがって!本当なら、とっくに高校卒業していて、知り合いが結婚して子供ができたくらいの時間がリアルではたってるはずなのに!」

叫び続けるあたしは、数秒後…廊下に立たされていた。

「そうよねえ〜」

廊下に立つあたしの隣に、何故か…夏希が立っていた。

「結構、時間が立ったわね。でも、里奈は再開して嬉しいんじゃあ〜ないの。本音でわ」

夏希の瞳に、闇が落ちる。

「一応…主人公だし、劇場版では活躍してたし…。あたしなんて、フラレるし…相変わらず、胸ないし…モブキャラだし…戦隊の一員なのにいい!」

その場で、泣き崩れる夏希。

「あ、あのね〜一応、時間枠では今、劇場版は制作中で…というか、劇場版とかいったらね。いろいろ問題が」

慰め、諭そうとするあたしに、夏希は叫んだ。

「どうせ!再開しても、この作者は投げ出すのよ!あたしで遊んだ後に!だったら、書かなきゃいいのよ!完結もできない癖に!」

泣き出す夏希。

「あのねぇ〜。そんなことを言ったら、心の狭い作者が」




場面は変わる。

授業中でありながら、校舎の屋上で佇む…生徒会長、九鬼真弓。

(闇の濃度が濃い)

九鬼は自らの拳を握り締め、感触を確かめた。

「感じているのかい?流石は、我が主の体。貴様のような紛い物の魂でも、闇を感じるのか」

誰もいないはずの屋上に響く声。

「!」

九鬼は咄嗟に、振り返りながら構えた。

「その凛とした姿。久しぶりね。真弓」