「どうなっているのかね?結城先生」

闇の中で、月明かりに反射するでこを強調しながら、木目調の机に、両膝を置く校長先生の眼光の鋭さにも、結城哲也は不敵な笑みで返した。

「何がおかしいの?」

校長先生の横には、副会長の桂由美子が腕を組んで、立っていた。

「別に…」

結城は笑みを、微笑みに変えて桂を見た。

「な、何ですか!」

突然の笑顔に、戸惑う桂。

「何でもないよ。ただ…月の濃度が高い」

哲也は、視線を月に向けた。

「結城先生?」

校長先生は、眉を寄せた。

「月の光は…人を惑わす。いや、人以外も…ですよ」

「!?」

校長と桂は、目を見開いた。

「今回の彼女の反抗は、月の異変を物語っています。我々の目的の一つである…彼女の復活」

「女神が、目覚め初めていると」

校長は、目を細めた。

「わかりませんが…」

哲也は、あるものを茶色のスーツの内ポケットから取り出した。

「これが、ここにあるのも、その為かもしれません」

そこまで言うと、哲也は深々と頭を下げた。

「失礼します」

そのまま、哲也は校長室から出た。


「どうして、あれが!あいつの手に!女ではないあいつが!」

桂は舌打ちすると、唇を噛み締めた。

「だが…あの力が、我々にあることが重要なのだよ。桂君」

校長は、立ち上がった。

「あの力がある限り、月影と名乗る小娘が束になっても心配することはない」

そして、後ろにある窓に振り返ると、月を睨んだ。

「才蔵。貴様の孫がいてもな」

校長はそう言うと、フフフッと含み笑いをもらした。