「乙女…レッドって何?」

頭の痛みで動けるようになったあたしは、廊下に転がる眼鏡ケースを見つめた。



「ほお〜。これは、これは」

あたしの教室の隣にある女子トイレから、ハンカチで手をふきながら、背広姿の男が出てきた。


「また変質者?」

あたしは思わず、一歩下がった。

「フッ」

男は笑うと、

「それも…レッドとはな。私には、ツキがあるようですよ」

ゆっくりとこちらに近づいてくる。

「何?」

男の全身から漂う異様な雰囲気に、あたしは身の危険を感じ取っていた。

「気を付けろ!乙女レッド!あいつは、怪人だ!」

ブリッジの体勢から動けないおっさんの胸筋の右だけが激しく、痙攣していた。

「わたしの胸筋レーザーが、激しく反応している!間違いない!乙女レッドよ!乙女ケースを取れ!」


「乙女レッドって、誰よ!」

あたしには、状況がわからない。


「フン」

背広の男は足を止め、左側にある窓から、空を眺めた。

「よかったですね。月が出てますよ。まだ明るくはないですけど…」


「月?」

あたしには、意味がわからない。

「本当ならば、乙女ソルジャーになる前に殺せと言われていましたが…どうせなら見てみたい!伝説の力を!」

男は、あたしの教室の前で止まり、じっとこちらを見つめている。


「レッド!チャンスだ!」

おっさんは起き上がるのを諦め、ブリッジを壊すと、背中を廊下に落とした。

そして、転がると、眼鏡ケースを素早く手で掴み、立ち上がった。

「レッド!変身だ!」

おっさんがケースを開けると、赤い眼鏡が飛び出し、あたしの顔に勝手にかかった。

すると、あたしの周りを赤い花びらが舞い、

それが全身に張りつくと、

学生服が変わった。


赤い戦闘服に身を包んで、眼鏡をかけたあたしが廊下に立っていた。 


「な、なにが起こったの?」

あたしは突然の出来事に、ただ困惑するだけだった。