「乙女アイロン!」

謎の乙女ソルジャーは、巨大なアイロンを召喚した。蒸気をはっしながら、赤く燃えた表面を向けて、九鬼に突進してくる。


(勝負は一瞬!)

九鬼は、軸足を確認した。しっかりと地面を踏み締めると、向かってくるアイロンではなく、乙女ソルジャーの目をみつめた。

(…)

攻撃のイメージを頭でシミュレーションする。

「乙女クラッシュ!」

謎の乙女ソルジャーが、アイロンを突きだした刹那、

九鬼は後ろに上半身をのけ反り、アイロンを避けると、ブリッジのように地面に両手をつけると、軸足を蹴り、回転するように、一回転した。

その時、右足は乙女ソルジャーの眼鏡を蹴り上げていた。

九鬼が回転し、地面に着地すると、

眼鏡が空中に浮かぶのは、同時だった。

勢い余って、九鬼の横を通り過ぎた乙女ソルジャーの変身が解けた。

九鬼は落ちてくる眼鏡を、キャッチした。

「危なかった…。きちんと、フレームを調節されていたら…取れなかった」

掴んだ眼鏡を見つめ、九鬼は後ろを振り返った。

変身が解け、気を失っている女を見て、九鬼は驚いた。


「平城山さん!?」

九鬼は、加奈子を知っていた。不純異性交遊の加奈子。

問題児として、生徒会内で有名だった。

「彼女が、乙女ソルジャー!」

倒れている加奈子に近寄ろうとした九鬼は、背中に悪寒が走り、振り返った。


いつの間にか…女が立っていた。

九鬼は、その容貌に絶句した。

いい歳した大人の女が、猫耳をつけ、フリフリのピンクのドレスを着て、立っているのだ。それも、腕を組み、偉そうに少し体を仰け反らしていた。

「…」

九鬼は無視することにして、加奈子に駆け寄った。

「平城山さん」

加奈子を抱き起こそうとした九鬼に、影が落ちた。

「無視するな」

いつのまにか、九鬼の前に、猫耳の女がいた。

見上げた九鬼は、猫耳の瞳の冷たさに、絶句した。




乙女ソルジャー月影

【くすんだ戦士に、恋しくて】

スタート!