イハンダーは、自分の体を確認すると、冷笑を浮かべた。

そして、あたしとブラックを見ると、

「…月は、いつからある?その答えを探せ…」

それだけを告げた。

「なんだ!その意味は!」

ブラックが近寄ろうとした瞬間、イハンダーは笑いながら、自らの剣を、首筋に突き立てた。

「見るがよい!敗者の末路を!」

「イハンダー!」

ブラックが駆け寄るよりも速く、イハンダーはそのまま屋上を囲む金網を突き破り、地上へと落下していた。

「クソ!」

ブラックは、破れた金網から、下を覗いた。


しかし、三階建ての校舎の下に、イハンダーの姿はなかった。

消えていた。

「チッ!」

舌打ちしたブラックは、屋上の出入口に向かって走る。

途中、変身が解け、制服に戻った。




「ごめん!今日も補習でさ」

頭をかきながら、夏希が屋上のドアを開けて、姿を見せた。

その横を九鬼がすり抜け、階段を飛び降りるように、下へ向かった。


「また…何かあったの?」

九鬼の思い詰めたような表情を見た為、夏希があたしにきいた。

「ま、まあね…」

あたしは、眼鏡を外した。

戦闘服から、制服に戻った。

ため息をつくと、破れた金網を見た。



そばで、固まっていた半月は、まだ震えていた。

唇も、微かに痙攣していた。

そんな口元から、半月は呪いのように、同じ言葉を繰り返していた。


「やつらが…来る…。やつらが…来る」






一階につき、イハンダーが落ちたと思われる場所に来た九鬼は、奇妙な殺気を感じ、振り返った。


「!?」

月の光に一瞬、反射した物体が、九鬼の顔を狙ってきた。