「乙女ソルジャーにならないかい?」


放課後、授業を終えたけど、教室に恥ずかしいものを忘れ物したあたしは、

取りに戻る為、自分の教室を目指していた。

部活に使わない一般校舎は、日が沈みかける頃には、殆んど人がいない。


そんな校舎で、まだ残っていた生徒に片っ端から、声をかけている…

怪しいおっさん。


怪しいおっさん。


ぴちぴちのコスチュームを着た怪しいおっさん。


っていうより!

おっさんがいたら駄目だろ!

ここは、女子高だ。

「変質者か?」

あたしは、足を止めた。

逃げるように、ダッシュする女生徒達。

悲鳴をあげるよりも、避けている。


あたしも逃げたいけど、



怪しいおっさんがいるのは、うちの教室の前だ。

どうしょう…。

と悩んでいるあたしと、おっさんの距離は、数メートル。

少しの戸惑いが、事態を急変させた。


おっさんはビラのようなものを、突き出しながら、こっちに向かってくる。

ヤバイ!

あたしが逃げようとしたが、動きが遅れた。

仕方なくビラを取ろうと手が出た。

「困ります!」



え? 

あたしじゃない女の声がした。

おっさんは、あたしを通り過ぎ、なぜか後ろにいた学年でも有名な美人松川さんに、ビラを渡そうとしていた。


松川さんは顔を真っ赤にして、あたしの横を走り抜けた。

遠ざかる松川さんの後ろ姿を、見送るあたしのビラを受け取る形で固まった手に、何も言わずに、ビラが渡された。


その瞬間、

ビラが光り輝き、

天井から何かが落ちてきた。

「痛っ!」

それは、あたしの頭にぶつかり…廊下に転がった。

それは、赤い眼鏡ケースだった。

その転がるケースを見たおっさんは、目を丸くし、

その場でブリッジをした。


「き、君が乙女レッドなのかあああ!」

興奮気味のおっさんはブリッジを成功させたのはいいが、起き上がることができなかった。