「馬鹿な…月の光なしで、どうして…」

テレポートしたイハンダーは、謎の校舎内にいた。

大月学園に似ているが、人の気配がなかった。

廊下で息を整えていると、廊下に足音が響いた。

リズムよい音は、確実にイハンダーに近づいていた。

「誰だ!」

イハンダーは銃口を、音が近付いてくる方に向けた。

細長い廊下の向こうから、ゆっくりと近付いてくる男。

きちんとスーツを着ている男が近付いてくる度に、廊下の外の時間が変わる。

日が落ち、夕暮れになり…そして、月が出ていた。

赤い月が…。


男は、イハンダーと3メートル程距離を開けて止まった。

「あ、あなたは…」

銃口を向けたイハンダーの腕が、震えていた。

男の赤く光る瞳が、イハンダーを射ぬいた。


「魔将軍ザン!」


「オホホ!」

イハンダーの真横から笑い声が聞こえた。

振り向くと、廊下の窓が開いており、その向こう…空中に、女が浮かんでいた。

「魔将軍!ビューティー!」

更に、後ろから殺気を感じ、振り返ると、

禿げ頭のグレイのスーツを着た男がいた。

「魔将軍…教頭!」

1人だけ素性が明らかだ。


「なぜ、逃げた?」

教頭の禿げ頭を見つめていたイハンダーに、魔将軍ザンが話しかけた。

「え!そ、それは…」

怯えるイハンダーに、魔将軍ザンは冷たく言い放った。

「怪人と違い…魔神は恐怖の象徴でなければならない。逃げた恐怖など、必要ない」


「月がなくても!変身できるなど聞いていない!」

イハンダーの言葉を、魔将軍ビューティーがせせら笑った。

「そんなに長く変身できるわけがないじやない。もう少し粘ったら…倒せたのに」

「今の若い者は、忍耐を知らん!」

教頭は、顔をしかめた。


「よって…貴様に罰を与える」

魔将軍ザンは、手を前に差し出した。

その手に握られているものは…!?


「変身」


数秒後、イハンダーの断末魔が廊下に響き渡った。