乙女戦隊 月影 〜恥じらいの戦士〜

「だり〜い…帰るのが、だり〜い」

誰もいなくなった教室で、無造作に並べた机の上で寝転んで、天井を見上げているは、花町蒔絵。

あたしのクラスメイトである。

なのに、なぜか今、蒔絵がいるのは、まったく違うクラスである。

多分ここまで来て、帰るのがだるくなったのだろう。

「彼女が、乙女グリーンだ」

半月ソルジャーの言葉に、あたしは目を丸くした。

「あの子があ?」

あたしは、思い切り頭を横に振った。

「無理!無理!絶対無理!あの子は、絶対無理!」

あたしがそう言っても、半月ソルジャーは肩をすくめて、

「無理だな。乙女ソルジャーを選出するのは、月の神だからな」

「月の神?」

「そう…月の女神が、決めるんだよ」

「何よ!それ」

あたしが、半月ソルジャーに詳しく問い詰めようとすると、

どこからか笑い声がこだました。

「ハハハハハハ!」

「何よ!このお決まりの登場の仕方は!」

あたしは、笑い声がした方を見た。

廊下の一番端に立つ男。

「あ、あやつは!」

半月ソルジャーの胸筋が、ピクピク動いていた。

「レッド!あやつは、怪人だ!」

と言うと、半月ソルジャーはあたしの後ろに隠れた。

「怪人?」

あたしは、首を傾げた。

ゆっくりとこちらに近づいてくる男は、どう見てもあたしと同じ学生だ。

「ハハハ!」

学生は笑いながら、ゆっくりとこちらに近づいてくる。

「今日…神は、僕を救ってくれた。電車で、この学園の生徒に触った僕に!警察に通報されかけた僕に!救いをくれた」

「チカン?」

あたしは一瞬、たじろいだ。

「ありのままでいい!ありのままの君でいいと!」

学生は、ものすごいスピードであたしに、向かって走ってくる。

「レッド!変身だ!」

「え!!」

よく変わらないけど、乙女の本能が危険を感じた。

あたしは慌てて、ポケットから眼鏡ケースを取出し、変身した。