「お疲れ様。どうしたの?挙式の確認?明日から立て続けだもんね」
「ああ、うん。いや、ちょっと真菜に話があって…」
「私に?なあに?」

真菜は、小首を傾げて聞いてくる。

拓真は、そんな真菜から視線を逸らして話し出した。

「あのさ、真菜、今、付き合ってるやついるのか?」
「は?何、急に。そんな人いないよ?」
「本当か?」
「うん。どうしてそんな事聞くの?」
「いや、俺、ちょっと見かけたんだよ。夜更けに真菜が、男とマンションに入って行く所」
「えー、見間違いじゃない?私、そんな夜遅くに出歩いたりしないよ?」
「いや、確かに真菜だった。それに…」

拓真が言い淀むと、真菜は、それに?と促してくる。

「それに、一緒にいたのは、専務だった」
「えっ!」

真菜が絶句する。

その顔に、拓真は確信した。

「やっぱり真菜、あの男と付き合ってるんだな?」
「ううん。付き合ってる訳じゃないの」
「じゃあ何だよ?あのマンション、あいつが住んでるマンションじゃないのか?」
「あのマンションって…」
「みなとみらいのだよ。俺、ローズ みなとみらいで仕事した日に通りかかったんだ」

真菜は、はあと小さく息を吐き出した。

「そっか。あそこ、ローズ みなとみらいに近いもんね」
「じゃあ、やっぱりそうなんだな!」
「うん。あそこは専務の住んでるマンションだよ。でも私と専務は付き合ってない」
「はあ?どういう事だよ。お前、付き合ってもいない男の家に行ったのか?あんな夜更けに?お前がそんな事するはずないだろう!」
「しっ、拓真くん、声大きいよ」

真菜は、辺りに誰もいないか確認してから、拓真を柱の影まで連れてきた。