ふと神楽と目が合う。刹那、背筋がゾクッとし身体中に戦慄が走る。ああ、同じ黒の瞳のはずなのに何もかも違う。それほどまでに神楽の瞳は光さえも映さない闇一色で染まりきっていた。一緒たりとも目を逸らすことさえ
許されないその間に息が詰まる。


「 緋翠 」
「 はい。なんでしょう。」

神楽の呼ぶ声で私は1つ瞬きをし、スっと息を吸う

部屋は驚くほど静かで、カチ、カチと時計の針の音が無機質に鳴り響いていた


「 今回の仕事の件だが、お前には伊織と共に行って貰う。――伊織。」


一気に緊張がほどけ思わず、は?と声が漏れそうになるのを抑える。..伊織?今伊織って言った?動揺する心を余所に神楽がそう呼ぶと、先程まで私と神楽以外誰もいなかったはずの部屋にふと後ろから背の高い男の気配がした。

「 はい。マスター、なんなりと。」

.....こいついつからいた?
丁寧にお辞儀をしながら1歩前に出て私の横に立つ私より頭2つ分ほど高い黒髪の男。聞きたくもないアルトボイスが耳に入り同時にフワッと彼の香水の匂いが鼻に入る。神様は私の味方ではないらしい。出来ることなら今すぐにでも立ち去ってしまいたい


「 緋翠?」
「はい。 なんでしょう。"マスター" 」
「 ふっ....緋翠、お前には期待しているよ 」


マスターは目を細め笑った。私たちの相性の悪さを知っているが故の言葉だろう。どこまでも意地悪なマスター様だ。


「 ........マスター。今回の仕事は 」

「 ああ。そうだな。簡潔に話す。お前たちには







"ヴォルフ"という名の暴走族の潜入をお願いしたい。」


やっぱり神様は、私の味方ではないらしい。