てん、てん、てん、

逃げるなら、今のうちだ。

そう考え、椅子から立ち上がろうとする。


「 ....じゃあ私、」

「 ―――おいおい。お前ら何してんだよ。」

その時、突然背後から男の声がし、思わず立ち上がろうとしていた体が固まる。



なに、........この男全く気配がしなかった。



「.......!墨谷さん.....!お疲れ様っす。」
「 おーオツカレオツカレ。」

"スミヤサン"そう呼ばれる男が現れ、男たちの視線が一気に私から外れる。

そして、次々に「お疲れ様っす!」と丁寧にお辞儀をしだす。


「 お前らそういうのいらねぇっていつも言ってんだろ。」
「 いや....!墨谷さんは俺たちの憧れなので...!」
「 .......ホント物好きだよな。お前ら。俺がお前らの立場にいたら俺のこと憧れだなんて死んでも思わねえのにな」


私を置いて繰り広げられる会話。目の前にいる男たちは私の後ろにいる男と会話していて顔を見なくとも、とても嬉しそうのが伝わってくる。

"スミヤ"。こいつは重要人物かもしれない。名前を覚えておかなければ。そう1人思う。

男は低くはっきりした声をしていて、教室内によく通った。


「 .....も、もしかして、墨谷さん、未玲ちゃんと...?!」

何を勘違いしたか、突然一人の男が私とスミヤの顔を交互に見つめ、変なコトを言いだす。

.....確かに、この流れで疑うのもおかしくないけど、

それにスミヤの声色が怪訝そうなものに変わる。

「 あ?何勘違いしてるが知らねぇが俺が来たのはお前らに用があったからだ。早く来い。」

「 ――!!はいっす!」