いつも通りロッカーでスリッパを脱ぎ、自分の靴へ履き替えて、校舎を出る。
今日は課題をしてたらちょっと遅くなっちゃって、人は少なめ。
グラウンドから野球部の掛け声がきこえる。
「おい。」
大好きなちょっと低めで、掠れた声が耳に入る。
待ち構えていたように、ベストタイミングで現れた凌先輩。
…先輩の姿久しぶりに見た。どこか元気のなさそうに見える。
暴れ出す心臓はどうしようもなくて、いつも先輩にどう接していたかすら忘れてしまった。
「…先輩っ、こんにちは。」
いつもどうやって先輩に笑いかけてたっけ。
もうわかんないや、
どうして関わろうとしてくるのか先輩の気持ちもわからない。
「あの、」
「先輩たちが謝りに来てくださいました。…ありがとうございました。」
大きな深呼吸の後、何か言おうとする先輩に被せて言う。
苦しそうに歪む綺麗な顔。
「別に、」
「じゃあ、失礼します」
せっかく忘れようとしてるのに。どうして。
無意識に震え出す手足は、先輩が嫌いなんじゃなくて、好きすぎる証拠。
「待て、」
パシッーーー
「っ、」
また、そうやって、普通に触れてくる。
ねえ、どうして?
「俺のこと、避けないでほしい。」
先輩の黒い瞳は酷く悲しい色をして、私のことを映し出して揺れていた。
そんな顔、しちゃダメじゃないですか?
「あの日は、本当に悪かった。ごめん。」



