恋に堕ちたら【完】



差し出されたビニール傘は一本。



「大好きな凌先輩と相合傘ですか!?」


前世でどんな徳を積めば、こんな経験ができるのか!!



「んなことするわけねぇだろ。」



不機嫌な声と表情。



もう片手から出てきた、紺色の傘に少しがっかりする。



そうだよね。



「…先輩、傘二つ持ってるんですね。」




「わりいかよ。」




「いいえ、ちょっと先輩との相合傘を期待しただけです。傘、ありがとうございます!」



ちょっとどころか、だいぶ期待した。


なーんだ、と超がっかり。




でもわざわざ私を呼び止めて、傘を渡してくれただけで、嬉しい。




「じゃあな。」



素早く傘をさして歩いていってしまう凌先輩。



なっ、歩くのはやっ!!