小牧くんは職員室に用があるとかで、保健室を出てすぐに別れ、自分の教室へ歩く。
にいなとりらちゃん心配してるかなぁ。
小牧くんには今度何かお礼しないとな。
そんなことを色々考えていると、前から歩いてきたのは大好きな凌先輩。
「凌先輩!!」
「……これ、どうした。」
めんどくさそうに顔を顰めたあと、私の頬を指した。
いつも私のことなんてノールックなのに、こん時に限って…ずるいなぁ。
「へ?…これ、は」
んーー、こんなに早く先輩に出会うと思ってなかったから、何も考えてなかった。
「ほっぺに虫が止まったと思って、思い切り自分でビンタしちゃいました!」
ちょっと、無理があったかな。
でももう初夏だし、虫が出てもおかしくない季節。
「…」
やっぱりすごい怪しまれてる。
「なんですか、その目は!」
「嘘じゃねえだろうな。」
全てを見透かす目に、真実を言ってしまいそうになるけど、ここはグッと我慢する。
「ほ、本当ですよ!わたしのバカさ加減知ってるじゃないですか!」
先輩を好きでい続けるために、好きな人に嘘をつかないと。



