私の問いに、和磨は人を小馬鹿にしたような笑いを浮かべている。
「ちゃんと、説明しなさいよ」
「説明?そのうち嫌でもわかるだろ?」
はぁ?
「どういう意味よ?だいたい和磨が熊谷さんはいい人だよって勧めてくれたくせに、何なのよ?もう訳わかんない。何が気に入らないんだか知らないけど、私に変な先入観持たせないでよね」
「知るか……」
和磨はタバコを咥えながら捨て台詞のように言うと、背を向け歩いて行ってしまった。まったく、何が気に入らないのよ。有り得ない。馬鹿呼ばわりされて……。和磨の言動に憤慨しながら家の玄関を勢いよく開けると、裕樹が何故か玄関で靴を磨いていた。
「おかえり」
「ただいま!」
「なぁ~に、ツンケンしてんだよ。またフラれたのか?」
はぁ……。
まったく揃いも揃って、人の気持ちを逆撫でしてくれるわ。さすが類友だな。裕樹も和磨も似たり寄ったりだ。
「大きなお世話ぁぁ」
裕樹に思いっきり顔を近づけ、嫌味ったらしく言ってやる。
「まぁ、相手も選ぶ権利あるもんな」
フンッ!
「はいはい。何とでも言って頂……」
玄関で裕樹と醜い争いの会話をしているところに携帯が鳴ったので、慌てて階段を駆け上がりながら携帯を開くと朋美からだった。
「もしもし、もう家?」
「うん。今入ったところ」
電話をしながら部屋に入りベッドの上にバッグを放り出し、そのまま自分もベッドに転がった。
「早速なんだけど、今度の土曜日開いてる?」
「土曜日?うん……。今のところ何もないけど」
今日はまだ月曜なのに、朋美らしい。もう土曜の話をしてる。
「この前の小林さん。覚えてるでしょ?」
「面通しの?」
「そうそう、それでさ。一緒に来てた加納さんって人が、珠美とまた会いたいんだって」
「はぁぁあ?」
青天の霹靂とは、まさにこの事。朋美の付き添いでいったのに、よもや自分に降りかかってくるとは思いもよらなかったよ。
「何それ?」
思わず、突いて出た言葉だった。
「相談所を通じて、そんなメッセージを送ってきたのよ。それと、余計な事もね」
余計な事?
「何?その余計な事って」
「う~ん……」
朋美が、珍しく言い淀んでいる。
「ハッキリ言いなさいよ」
「それがさぁ……。小林さんに、気に入られちゃったみたいなんだ」
ありゃりゃ。
「そうなの?でもそんな悪い人じゃなかった気がするから、もう少し接してみたら?」