「何だよ?急に大きな声出すな。びっくりするだろう?」
「和磨。腕、腕は大丈夫?」
「腕?別に平気だろ?おい、何だよ」
咄嗟に和磨の両腕を持って見ると、着ていたダウンの両腕の辺りが少し擦れていた。
「和磨。腕……本当に大丈夫なの?」
「大丈夫じゃない」
「えっ?」
すると離れていた和磨の腕がまた背中にまわされ、そのままブロック塀に押し付けられた。和磨が持っていたコンビニのレジ袋が、背中の方で サカサ音を立てている。
「和磨。ちょ、ちょっと離して」
「少し黙ってろ」
「和……」
いきなり和磨が乱暴にキスをした。
嘘でしょ?
和磨。何で?
何故、和磨が私にキスするの?
必死に離れようとしたが、余計ブロック塀に押し付けられ和磨にギュッと抱き締められた。手慣れた感じの和磨のキスは、場数を踏んでいる感じで凄く上手い。唇が離れた後も和磨は私を抱き締めたままで、和磨の顔を見上げる事が出来ずにいる。でもあの彼女の顔が目に浮かび、何だか後ろめたい気持ちでいっぱいだった。
「今度の土曜……二人で何処か行こう」
エッ……。
やっと和磨が少し腕の力を抜いたので見上げると、和磨がおでこにキスをした。いきなり何?二人で何処か行こうなんて……。
「和磨。でも……」
彼女は?彼女とは、会わないの?
「でもじゃねぇよ。10時に駅のロータリーな。話しはゆっくりその時に聞くから、頭の中整理して来いよ」
「そ、そんな急に言われても」
「俺も、お前と……話したい事がある」
「和磨。で、でも、何もわざわざ駅で待ち合わせしなくたって、私が和磨の家に迎えに行けばいい話しじゃないの?」
「……」
あれっ?私、何か変な事言った?
「いいだろ?面倒臭がらずに駅まで歩いて行けって。しっかし何だな……」
「何よ?」
「珠美。マジで胸ないよな。こうしていてもまったくわからねぇ」
はぁ?
抱き締められて密着していた身体を離そうとして、和磨を突き飛ばした。
「信じられない!和磨。最低」
和磨に誘われて複雑な思いだったが、やっぱり嬉しさを隠しきれず和磨を置いて走って玄関まで向かう。すると後から和磨が追い掛けてきた。
「いきなり走るなって言っただろ?汚ねぇよ、珠美」
「そんなの知らないわよ」
和磨が真横に迫っていて慌てて玄関を開けた。
「ただいまぁ」
「珠美。土曜、忘れるなよ?」
「……」
「おかえり」