― 着信 佐原 朋美 ―
朋美?どうしたんだろう。メールじゃなくて、電話なんて珍しいな。
「もしもし?」
「珠美?今、電話してて大丈夫?」
「うん。もう家の前だから大丈夫。どうしたの?」
「・・・・・・」
「朋美?」
いつものマシンガントークの朋美らしさがない。
「帰りに珠美に会いたかったんだけど、事務所に電話したら帰ったあとでさ……。それで携帯にちょっと前にも電話したんだけど、出なかったから」
「あっ。ちょうど歩いてたから、気づかなかったのかも。ごめん」
もしかしたら、横断歩道を走ってる時とかだったのかもしれない。
「ううん。あのさ、珠美。私、妊娠したみたい」
「えっ?妊娠って……朋美」
間抜けな自分の返答に、思わず我に返る。朋美が妊娠したって、もしかして……。
「相手は、小林……さん?」
「そう。珠美……。今から会えないよね?」
朋美。きっと、不安で、不安でしょうがないんだ。
「大丈夫だよ。今からまた駅に向かうから、朋美は今、何処にいるの?」
「まだ会社の近く。私、珠美の駅まで行くよ」
「わかった。じゃぁ、いつも待ち合わせしてる駅前のカフェにいるね。それじゃ」