常盤くんの少し懇願するような、切ない表情にダメとは言えなかった。


「わかったわ…」

「ありがとう」


常盤くんはいい人だと思う。
一緒に学級委員をやっていた時もよく気がつくし、優しいしこの容姿だし、王子様と騒がれるのもわからなくない。

でも、恋をする気持ちのない私なんか、いくら考えても答えは同じ。

どうして私なんかを……。
常盤くんなら他にいくらでも選べるでしょうに。

常盤くんの彼女になりたい女の子は、たくさんいるのに。


どうして私なんか……。



「あれ、春日井さん?」


常盤くんと別れ、一人で帰ろうとしたところで、黄瀬くんに話しかけられた。


「今帰り?よかったら一緒に帰ろうよ!」

「ええ…」

「やった!鞄取ってくるね」


…何故かしら。
さっき常盤くんに真剣に告白されたばかりなのに、何気ない黄瀬くんの笑顔に胸がきゅうっとなるのは。


「お待たせ」

「いいえ、行きましょう」

「うん」


あなたの隣を歩くのは、何故かとても安心する。


「今日は部活?」

「いえ、常盤くんと話していたの」

「常盤くんと?」

「告白されたのよ」


黄瀬くんの目は大きく見開かれた。


「…そうなんだ」