「黄瀬!こっちだ!」
「OK!」
決して目立つわけではないけど、さりげなく良いパスを出してアシストするの。
黄瀬くんからパスを受け取った彼が投げたボールは、バスケゴールに吸い込まれてゆく。
「ナイッシュー!」
「ナイスパス!」
笑顔でハイタッチを交わす姿が眩しい。
「ねぇ、今のめっちゃカッコよくない?」
「黄瀬くんのパス最高だったよね!」
…そんなの、私はずっと前から知ってたわ。
こういう時、いつも注目されるのはゴールを決めた人だけど、上手くアシストする人がいてこそ成功するの。
小学生の時もそう、いつもゴールを決めまくる九竜が目立ってたけど、そのフォローをしてたのはいつも黄瀬くんだった。
…ずっと前から、知ってたのよ。
「黄瀬くん!ナイスパス!」
「カッコイイ!」
なのに今更気づく人がいて、なんだかものすごくイライラするわ。
「すごいね大志くん!すっかり人気者だぁ」
「…見た目が変わっただけで手のひら返し?私は気に入らないわね」
「私は嬉しいけどなぁ。みんなが大志くんの良さを知ってくれて」
「……。」
なんで私は、こんなにイライラしているのかしら。
私にそんなこと思う資格なんてないのに。



