「おはよう。」


その声は、紛れもなく黄瀬くんだった。

聞き慣れた声のはずなのに、別人だと思った。

クルクルした天パにメガネがトレードマークだった黄瀬くん。
だけど、そこにいたのは――


「えっ!?黄瀬!?」
「マジで!?」
「やだ、めっちゃイケメン!!」


天パを遊ばせ、前髪を分けてオシャレにカットしたヘアスタイル。
毛量が多かった髪は短くなり、スッキリとした爽やかな印象を与える。

そして、メガネをかけていない素顔の黄瀬くんは、目鼻が整っていることを強調させていた。


「大志くん!?」
「おはよう、さっちゃん」
「おはよう!すごい!めっちゃ似合ってるよ!!」
「ありがとう」


照れ臭そうにはにかむ笑顔が、また女子たちをざわつかせる。


「すっごくカッコイイ!!コンタクトにしたの?」
「そうなんだ」
「メガネも似合ってたけど、こっちのがもっとカッコイイよ!」


咲玖は興奮気味に褒めちぎっていたけど、私はただ呆然と見つめていた。


「春日井さん、おはよう」

「お、おはよう…」

「どう、かな…?」

「どうって…」


びっくりしたわ。
あなた、そんな顔していたのね。
すごく素敵だと思うわ。

そう言えばよかったのに、


「…悪くないんじゃない?」


口から出た言葉はかわいくなかった。