蒼永くんのお父さんは少しずつ理想のイメージを具体化させてくれた。
色々と相談して、ようやく目指す髪型が決まる。


「じゃあ、まずはシャンプーからやろうか」

「はいっ」


シャンプーしてもらうだけでもすごく緊張するな…。

プロの美容師さんはシャンプーだけでも全然違って、ツボを刺激される感じがしてすごく気持ちいい。
更にはサービスのヘッドスパはうっかり寝そうになってしまうくらい、リラックスできた。


「じゃあカットしていくね」

「はい」


チョキンチョキン、と小刻みで軽快な音が心地よい。
用意してくれた雑誌は、普段読まないようなメンズファッション誌でとても新鮮だ。

…なんか美容師さんってものすごく話しかけられるイメージだったけど、そうでもないんだな。
なんか蒼永くんのお父さんって感じがする。


「――はい、できたよ」

「え……」


こ、これが僕……?

鏡の前にいるのは、さっきまでのモサイ自分とはまるで違った。
メガネをかけてよく見て、あまりの変身ぶりに改めて驚く。


「僕が僕じゃないみたいだ…」

「気に入ってくれた?」

「はいっ!ありがとうございます!」

「じゃあ、軽く手入れの仕方とセットの仕方教えるね」


一から丁寧に教えてくれて、ドラッグストアでも買える安くて使いやすいヘアケア用品も教えてくれた。