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「黄瀬大志です!よ、よろしくお願いします…っ」

「蒼永の父です。今日はよろしくね」


訪れたのは最新トレンドの街、原宿。
オシャレな若者たちが集まる都心の一等地に、僕みたいな冴えないメガネの中学生が一人で訪れるのはものすごく緊張する。

緊張で強張った表情をしてる僕を、蒼永くんのお父さんは優しく迎えてくれた。

お父さん、めちゃめちゃイケメンだな…。
最近お腹が出てきたうちの父親とは大違いすぎる。

蒼永くんはお父さん似なんだな。
蒼永くんが年を取ったらお父さんみたいになるのかな。


「メガネはここに置いてくれる?」

「あ、はい」


メガネを外して用意してくれたケースに置く。
鏡に映った自分の姿はぼやけているけど、頭がモサモサしてるのはぼやけてもわかる。


「結構癖が強いんだね」

「そうなんです」

「縮毛矯正はしないの?」

「髪が痛むし高いと親に言われて…」

「確かに中学生には難しいか」


やってみたいって頼んだことはあるんだけど、あんまりいい顔されなかったんだよね…。


「どうなりたいとかイメージある?」

「あんまり…癖を目立たなくしたいとは思うけど、何が自分に似合うのかわからなくて」

「それじゃあ」


蒼永くんのお父さんはタブレット端末で、色んな髪型を見せてくれた。


「この辺りの髪型なら、癖を活かしたままカッコよく仕上がるよ」

「なるほど…」

「こっちは丸いシルエットで、どちらかというとかわいく見えるかな」

「できれば、カッコイイ方がいいです…」