なんで上から目線でそんなことを言われなきゃいけないんだ、と思ったけどこの際どうでもいい。
僕は今、はっきり宣戦布告されている。
「俺は桃乃ちゃんと真剣に交際したいと思ってる。
誰にも譲るつもりはないよ」
「僕だって、絶対に負けない……!」
相手が誰だろうが、関係ない。
春日井さんを誰にも譲りたくない。
「そうか、じゃあどっちが勝っても恨みっこなしだ。
俺は遠慮なく行かせてもらうよ」
「……っ!」
挑戦的な笑みを浮かべ、「それじゃあ」と言ってみんなのいるカラオケルームに戻っていった。
みんなの前ではいつもの柔和で爽やかな笑顔を浮かべていた。
色々と思うことはあるけど、春日井さんに対する想いが真剣なんだということはよくわかった。
だからこそ、負けられない。
絶対に負けたくない。
僕は部屋に戻らず、ある人に電話をかけた。
「…もしもし」
「あっ蒼永くん!?突然ごめんね!今大丈夫?」
「うん、今寮の部屋」
久々に聞く蒼永くんの声は、電話越しだけど低く聞こえた。
僕はまだだけど、声変わりの前兆がきているのかもしれない。
「蒼永くんのお父さんって美容師さんなんだよね?」
「うん」
「すごくオシャレな美容師さんって聞いたんだけど」
「うーん、そうなのかな?」
「あの、お父さんに僕の髪切ってもらえないかな?」



