とりあえず好きなバンドの一番有名な曲を入れた。
これなら多分みんな知ってそうだし、盛り下がるようなことにはならないと思うけど……。
イントロが流れると、ノリの良い人たちが手拍子なんかしてくれて、嬉しいけど余計に緊張した。
…ふう、なんとか歌い終わった。
「あ、あれ…?」
なんか、シーンとしちゃってる…?
あまりにも下手すぎて、ドン引きさせた…?
「大志くん…」
「あ、さっちゃん…」
「大志くんってそんなに歌上手だったの〜!?」
「え?」
さっちゃんの言葉を引き金に、他の人たちもワアッと群がる。
「すげーな黄瀬!上手すぎかよ!」
「この曲歌うの難しいだろ!」
「すごい良かった〜!!」
「あ、ありがとう…?」
男子も女子もそんなに褒めてくれるとは思っておらず、戸惑いが隠せない。
「すごいわ、黄瀬くん」
「春日井さん…」
「そんな特技を隠し持ってたなんて」
「いや、その…」
「それに、私もそのバンド好きなのよ」
「そうなの?」
「ええ。アルバム持ってる?」
「持ってるよ!」
そして、まさか春日井さんと同じバンドが好きとは思っていなかった。
結構付き合いが長いはずなのに、初めて知った。
他にも色々聞いていたら、意外にも音楽の趣味が同じことがわかって。
新しい発見を得た。



