そういえば、10年後って今の兄さんと同じ年なのか。


「ねぇ、兄さんなら未来の自分になんて手紙書くの?」

「えー、生きてる?って」


全然参考にならない….。


「そんな参考にならないって顔しないでよ。
別に何だっていいじゃん?」

「そうだけど…」

「未来の自分に言いたいことはないけど、10年前の自分に言っときたいことはあるかなぁ」

「なんて?」

「ちゃんとしとけよ、って」


よく意味がわからず、きょとんとして兄さんを見つめる。
確かに兄さんはルーズなところはあるけど、いつも優しいし勉強はできるし、一応「ちゃんとしてる」大人だと思ってるけど。


「大志は好きな子いる?」

「えっ!?」

「あ、その反応はいるんだ〜」

「……。」


……身内にバレるの恥ずかしいな。
お母さんにも秘密にしてるのに。


「どんな子?」

「…教えないよ」

「え〜。ま、いいけどね。
大志は俺と違って真面目で優しいから大丈夫と思うけど、その子のこと大事にしなよ」

「…兄さんも真面目で優しいでしょ?」

「そう見えるー?かわいい弟の前ではいいお兄ちゃんでいたいからね〜。
でも、俺みたいになっちゃダメだよ」


そう言って兄さんは部屋から出て行った。
最後まで兄さんの言いたいことは、よくわからなかった。