公園のベンチに座り、春日井さんはしばらく俯いていた。
僕は隣に座り、ただ公園の景色を眺めた。
サッカーをしたり、砂遊びをしたり、ジャングルジムで遊んだり。
色んな子どもが遊んでるのを眺めながら、じっと待った。
「…変なもの見せて、ごめんなさい」
第一声はまさかの謝罪だった。
「どうして謝るの?」
「恥ずかしいところ見せて…申し訳ないわ」
「春日井さんが謝ることじゃないよ」
「…うちのお姉ちゃん、あんなことがしょっちゅうなの」
お姉さんは端的に言って、かなりモテるらしい。
それ故に恋愛絡みのトラブルが多く、あんな風に自宅前での言い争いが昔からあったんだそう。
「お姉ちゃんはいつも男の方から言い寄ってくるって言うけど、違うのよ。
お姉ちゃんだってわかってやってるの。自分がどんな風に見られてるか計算して、ユウワクしてるのよ」
「ユウワクかぁ…」
「別にお姉ちゃんのこと嫌いじゃないし、否定するつもりもない。
でも私は理解できない。誰かと衝突してまで、恋愛して楽しいの?疲れないの?」
――こんなことを言うのは間違ってるのかもしれないけど、初めて春日井さんの本音を知れた気がした。
春日井さんはあまり自分の話をしない。
話したくないようにも感じた。
だから今初めて、春日井さん自身の心からの声を聞けた気がする。



