「あれー?桃ちゃんの彼氏ー?」
「いや…っ」
「やめて!!黄瀬くんは友達なんだから!!」
…そんなに力強く否定されるとちょっと悲しい。
「えーそうなの〜?
でもぉ、今からイイオトコ見つけた方がいいよぉ?」
「…っ、私はお姉ちゃんみたいにならない!!
恋なんて絶対しないからっ!!」
「……そう。つまんないの〜」
そう言ってお姉さんは先に家に入ってしまった。
俯いて唇を噛み締める春日井さん。
瞳が潤んでいるけど、絶対に泣くまいと耐えているんだろう。
…何となくだけど、恋に興味がない理由がわかったような気がする。
「…春日井さん、まだ時間ある?」
「…え?」
「もうちょっとだけ、歩かない?」
僕にできることなんてないかもしれないけど、このまま帰るのはどうしてもできなくて。
家の前にいるのに、まだ歩くなんておかしな話だけど、それしか思いつかなかった。
気の利いたことが言えたらよかったんだけど……。
「…この先に、公園があるの。そこまで歩かない?」
「うん、いいよ」
僕たちは春日井さんの家から少し歩いた先にある公園へ向かった。
その間会話はなかったけど、不思議と気まずさはなかった。
上手く言えないけど、今はただ…春日井さんの傍にいたいなと思った。



