…あ、やばい、と思った。

これが漫画だったら、ブチって何かが切れる音が聞こえてる。


「こんの泥棒猫!!」


そう叫ぶと、勢いよくお姉さんの頬にビンタした。


「お姉ちゃんっ!!」

「…いったいなぁ」


お姉さんは殴られた頬を押さえながら、一歩も引かないといった様子で相手を睨みつける。


「アンタより桜子の方が魅力的だっただけじゃん?
捨てられたこと桜子のせいにされても困るんですけど?」

「この女……っ!!」

「もうやめてください!!」


顔を真っ赤にしながら震え、もう一度手が出そうになっている彼女の前に春日井さんが立ちはだかる。


「姉も言いすぎですけど、殴ることはないんじゃないですか!?お願いですから、もう帰ってください……っ」


小学生の女の子が必死に頭を下げて頼み込む姿を見て、流石に冷静になったのか、彼女たちはお姉さんをガン付けて去って行った。

彼女たちがいなくなってから、春日井さんはお姉さんに向き直る。


「お姉ちゃん!!いい加減にしてよ!!」

「だからぁ、桜子のせいじゃないってば」

「だったら何度もトラブルを持ち込まないでよ!
家の前でああいうこと、何度目なの!?」

「だって、仕方なくない?
向こうから寄ってくるんだし〜」


お姉さんは、チラリと僕の方を見た。