僕も名前で呼んでもいい?って、思い切って言ってみようか――…


「あのっ、」

「――待って!」


急に春日井さんは大きな声をあげて僕を制止した。
凝視する正面に視線をやると、何やら制服姿の女子が言い争っていた。

どこの学校かはわからないけど、高校生かな?


「お姉ちゃんっ!!」


春日井さんはそう叫ぶと、女子高生たちに向かって走って行った。


「お姉ちゃん!何してるの!?」

「あ、桃ちゃんだぁ。おかえり〜」


少し距離を置いて、僕も駆け寄った。

この人が、春日井さんのお姉さん……?
顔立ちはよく似ていてお姉さんもかなり美人だけど、お姉さんの方がタレ目が印象的で髪型もふわふわしていて、かわいらしい雰囲気だ。


「おかえりじゃないわよ!何があったの!?」

「知らなぁい。この人たちが桜子(さくらこ)のこと責めるの〜」

「しらばっくれないでよ!!人の彼氏盗ったくせに!!」


お姉さんの目の前には同じ制服の女子高生三人が取り囲み、その中央にいる髪の長い人がすごい剣幕でお姉さんに詰め寄る。

これは、修羅場というやつでは……?


「だから、盗ってないわよぉ。あっちから告ってきたからOKしただけだし〜」

「マサヤはあたしと付き合ってたのよ!それなのに急に好きな子ができたなんて、アンタが色目使ってマサヤを誘惑したんでしょ!?」

「そんなの知らなぁい。桜子はただ、ふつーーに話してただけよぉ?」