僕が呼びたくても呼べない名前を、こうも自然と呼んでいるのが悔しくて、ついこんなことを言ってしまった。
「春日井さんっ!今日一緒に帰らない!?」
「え?」
「だ、ダメかな…?」
「いいわよ」
「ありがとう…!」
必死になってるのが情けないと思いつつ、二人で帰れることがものすごく嬉しい。
それから先生が入って来て、学級委員会が始まった。
一緒に帰れることにソワソワして、ちゃんと会議の内容を聞けていたのかは怪しい。
早く終わらないかなと、そればかり考えていた。
「じゃあ、帰りましょうか黄瀬くん」
「うん、帰ろう」
「桃乃ちゃん、また明日ね」
「ええ。また明日」
帰り際、常盤くんがチラッと僕の方を見た気がした。
これ見よがしに名前を呼んでいたのは、何となく気のせいではないように感じた。
やっぱり、恋敵確定かもしれない…!!
「ねぇ、春日井さん…常盤くんとは仲良いの?」
帰り道、思い切って聞いてみた。
「常盤くん?普通よ。学級委員同士よく話すだけで」
「でも、名前で呼んでたから…」
「常盤くん、女子のことみんな下の名前で呼ぶのよ」
「そうなんだ…」
春日井さんだけではないみたいだけど、でもさっきの感じ…気があるように感じてしまうな……。



