さっちゃんは買ったばかりの御守りを蒼永くんに渡す。
「俺に……?」
「もうすぐ大会でしょ?頑張ってね!」
「…ありがとう」
よかったね、と思わず心の中で囁いた。
さっちゃんに向かって優しく微笑む蒼永くんに、僕までドキドキしてしまった。
ちなみに蒼永くんはこの後、空手の関東大会で5,6年生を押さえて優勝し、全国に出場を決めた。
「さっちゃんと蒼永くん、ほんとにお似合いだよね」
思わず口に出していた。
「そうね」
「あの二人は、大人になっても仲良しでいてほしいね」
…あわよくば、僕は春日井さんと仲良くなりたいけど。
漏れ出るこの願望は、口には出せない。
でも、これだけこぼすことを許してほしい。
「僕もいつか、あの二人みたいに思い合える人と出会いたいな」
「……」
「あっごめん!変なこと言って!…男のくせに、変だよね」
「どうして男だと変なの?」
「え?」
春日井さんは真っ直ぐな目で言い切った。
「夢みることに男女なんて関係ないわ」
彼女の澄んだ瞳はとてもキラキラして見えた。
ああ、僕はやっぱり君が好きだ。
心の底からそう思った。
君の色眼鏡で人を見ない真っ直ぐでカッコイイところ、誰にも流されないクールなところがとても眩しい。
だけど。
「…でも、私は恋とか愛とか、興味ないのよね」
君は、ものすごく遠くて届きそうにもない。



