僕はふと、思った。
今までだったら、自分から行きたいところの提案なんてできなかった。
どちらかと言うと、人の目を気にして誰かに合わせてばかりいた。
でも、この三人は違う。
頭ごなしに否定したり、笑ったりしないで受け入れてくれる。
だから、こんなにも居心地が良いんだ。
「…ありがとう」
誰にも聞こえない声で呟き、この出会いと縁に感謝した。
「この後どうする?」
「御守り見たいな〜」
「いいわよ」
さっちゃんはものすごく吟味した後、勝負の御守りを買った。
「これにする!」
「僕も兄さんに買って行こうかな」
「お兄さんに?」
「兄さん、弁護士目指して勉強中だから」
「すごいね!!」
「まだ大学生だけどね」
「桃ちゃんはお姉さんいたよね?何かお土産買わないの?」
さっちゃんがそう尋ねると、春日井さんは少し複雑そうな表情をした。
「うちの姉は御守りなんかいらないわよ」
「春日井さん、お姉さんいるんだ」
「まあね」
「わたしと蒼永はひとりっ子だからうらやましいなぁ」
「そう?一人の方が気楽でいいと思うけど」
もしかして、あんまりお姉さんと仲良くないのかな……?
「ところで、咲玖はその御守り誰の?」
「蒼永にだよ!」



