「ねぇ、春日井さん」
「何?」
「今日、楽しかった?」
春日井さんは少し目を丸くして僕を見返す。
でも、いつものクールにすぐに戻った。
「楽しかったわよ」
「よかった。僕もすごく楽しかったよ」
「そう」
「あの…、どうしてクリスマスが嫌いなの?」
ずっと気になっていた台詞。
子どもなら誰しもが大好きなクリスマスなのに、どうして嫌いなんだろう?
その理由が、どうしても気になってしまった。
「別に、何だっていいじゃない。子どもがみんなクリスマスが好きなわけじゃないのよ」
「…そ、そうだよね…」
――今、明確に線を引かれた。
「余計なこと聞いて、ごめんね」
「…いいえ」
失敗した、と思った。
なんで踏み込むようなこと聞いちゃったんだろう……。
せっかく楽しかったのに、最後に余計なこと聞いちゃった。
「…じゃあ、私こっちだから」
「あ、うん、気をつけて」
「またね」
春日井さんの背中を見送りながら、その背中がどこか寂しそうに見えると思った。
気のせいかもしれないけど、一瞬顔が曇ったようにも感じた。
……どうしたら、もっと君に近づけるのかな。
どうしたら君のこと、もっと知れるんだろう――…?



