自分のマフラーを外して桃に掛ける。
若干鼻が赤い…こんな寒い中でずっと待っていてくれたんだ……。


「ごめんね…」

「大丈夫…大志は、絶対来てくれると思ってたから…」

「桃……」


待たせてしまったのは僕なのに、信じて待っていてくれたことに胸の奥がきゅうっとなる。
とりあえず近くのカフェで温かいドリンクを買って、少しでも体を温めてもらった。

僕は遅れた理由を話した。


「歩道橋から落ちそうな男の子を助けたなんて…大志らしいわ」

「そうかな?」

「大志は怪我はないの?」

「ちょっと擦りむいただけだよ」

「大丈夫?ちゃんと手当てしたの?」

「男の子のお母さんが絆創膏くれたから、大丈夫」


そう言って絆創膏を貼った手のひらを見せる。


「痛そうじゃない…」

「大丈夫だよ」


桃はそっと僕の手を握りしめる。


「大志に何かあったんじゃないかって…すごく不安だったんだから…」

「ごめんね、心配かけて…」


これ以上、桃にクリスマスの嫌な思い出を増やして欲しくなかったのに。
ものすごく不安にさせてしまった…。


「すごく遅れてしまったけど、これからイルミ見に行こう…?」

「ええ…」


少しでも、良い思い出に塗り替えてもらえたら嬉しい。