「今日遅刻したお詫びにって誘ってみたら?」

「いいの?」

「つーか俺が会ってみたい」


兄さんがそう言ってくれるなら…、誘ってみようかな?
桃、スノボに興味あるって言ってたし。


「それにしても、なるほどねぇ。大志がイメチェンしたのもその子の影響かぁ」

「まあね…」

「若いっていいなぁ」


…兄さんも若いのに、なんでそんなにおじさんみたいなんだろう。


「着いたよ」


兄さんは待ち合わせ場所の駅前に車を停めてくれた。


「ありがとう!」

「大志、彼女のこと大事にするんだよ」

「わかってる!」


僕は車から飛び出して、全速力で走った。
桃に早く会いたい――…

待ち合わせ時間から1時間以上遅刻してしまった。
まだ待っていてくれているだろうか?
寒空の下、連絡もできなくて心配かけてしまったと思う。


「――桃っ!!」


待ち合わせ場所に、ポツンと佇む桃がいた。
僕の声に気がつくと、ハッと顔を上げる。


「遅くなってごめん!!」

「大志…っ」


急いで駆け寄った僕に、桃はぎゅっと抱きついた。


「よかった…っ、無事で…!」


微かに声も体も震えてる。
体が震えてるのは…多分寒さだけじゃない。

僕は桃の冷えた体を強く抱きしめた。


「ごめんね…スマホが壊れて、連絡できなくて…」

「ううん、何もなくてよかった…」