* * *


「…桃乃ーっ!まだ寝てるの?」


お母さんの声で、ハッとした。


「遅刻するよ〜。桃乃は冬になると朝に弱いんだから」

「……。」


……またあの夢だ。

12月になると、いつもあの夢を見る。

私はいつまで囚われてるのかしら。
家族を捨てた父親のことなんて、あんな最低な人のことなんて思い出したくないのに。

毎年クリスマスシーズンになると憂鬱になる。
お姉ちゃんは大抵いないのでいつもお母さんと二人きりだったり、最近は咲玖たちと一緒に過ごすこともあった。

楽しいけど、心のどこかにまだポッカリ穴が空いたまま。
未だに塞ぐことはできない。

多分私が心の底からクリスマスを楽しむことなんて、一生ないんだと思う。