またファンの女の子に声をかけられてるのかと思ったけど、近寄ってみてそうではないことに気づいた。


「どうしてみんなでフリマに来てるの?
蜜柑が誘った時は来られないって言ってたのに!」

「だって蜜柑ちゃん、お仕事とか言って断るじゃない。学校も遅れてきたり、先に帰ったり」

「だから一緒に遊びたくないのかと思ったの」

「そんなことないよ!」


どうやら話しているのは、同じ学校の友達のようだ。


「クラスで一番イケメンの山本くん、蜜柑ちゃんのこと好きみたいだし?」
「ずるいよね、蜜柑ちゃんばっかり」

「そんな…っ」


泣きそうになる蜜柑ちゃんを見て、もう見てられないと思った。
出て行こうとしたけど、僕より早く桃が前に出た。


「蜜柑ちゃんは一生懸命モデルの仕事を頑張ってるだけよ」


突然現れた中学生のお姉さんに、みんなびっくりしたように振り返る。


「ファンの女の子から声をかけられるくらい応援されてるのは、蜜柑ちゃん自身の努力あってこそだと思うわ。
ずるくなんかない、蜜柑ちゃんは真面目に頑張ってるのよ」

「……っ」


今度こそ、蜜柑ちゃんの瞳に涙が滲んだ。
周りにいた女の子たちは気まずそうな顔をして、その場を離れて行った。


「大丈夫?」


桃はハンカチを蜜柑ちゃんに差し出す。