「ねぇ、桃」
「何?」
「…僕は桃だけだからね」
「――っ!!」
私だけに囁かれた言葉と、ちょっと照れた優しい笑顔。
…何なのよ、もう。
そんなのってずるいじゃない…っ!
「…ばか」
「えへへ」
なんでそんなに嬉しそうに笑うの?
笑顔がかわいくてキュンとしたじゃない。
自分が恋愛なんて、ってずっと思っていたけれど、想像以上にハマってしまっている……。
「桃、一緒に帰ろう」
「ええ」
ただ一緒に帰れるだけで嬉しそうな大志。
その笑顔にまたキュンとさせられてるなんて、あなたは知らないでしょう?
「…あのっ!手を繋いでもいい…?」
帰り道、何を真剣な表情で言われるのかと思ったら……。
「どうぞ?」
サッと差し出した手を、私のより大きくて少しゴツゴツした手が優しく包み込む。
「ありがとう」
「…っ!」
だから、いちいち嬉しそうな顔しないで!
大志の真っ直ぐな愛情表現はいつもくすぐったい気持ちにさせるけど、全然嫌ではない。
むしろ嬉しいから困る…。
「家まで送るね」
「嬉しいけど、大志の家反対方向なんだから。
無理しなくていいのよ?」
「僕が桃ともっと一緒にいたいだけだから…」
「…そう」
ここで素っ気なく顔を背けてしまうから、私ってかわいくないのよね…。
「――あら、桃乃?」



