「ありがとう、助かったわ」

「いや」

「黄瀬くんも、ありがとうね」

「いやっ、僕なんて…むしろお礼を言うのは僕の方だよ……」


先に助けてもらったのに、何もできなかった。


「ありがとう、春日井さん。九竜くんも、僕なんかを助けてくれてありがとう…」

「なんか、って言うのは失礼なんじゃない?私たち友達なんでしょ?」

「…っ!」


春日井さんの言葉に、我慢できなくなってしまった。
情けなくもボロボロと涙がこぼれ落ちる。


「ほんとに…ありがとう…っ」


みんなと友達になれて、よかった。
心の底からそう思った。


* * *


後から春日井さんに聞いた話だけど、灰澤くんは白凪さんのことが好きらしい。
だけど、好きな子の前では上手く話せなくなるらしく、白凪さんには全く伝わっていない。

基本的にはガキ大将気質なので、白凪さんと図工のペアになった僕を妬み、あんなことをしてきたらしかった。


「咲玖は男子に人気あるのよ。ね、九竜?」

「……。」


そういえば、九竜くんが気になることを言ってたけど、聞いてもいいのかな?


「…咲玖は俺の許嫁だから」

「い、いいなずけ?」


思いがけず、聞く前に答えを聞いてしまった。


「許嫁って、つまり結婚の約束をしてるってこと?」

「そう」

「冗談だと思うでしょ?本気なのよ」