「わぁ…綺麗だね!」
「ええ、そうね」
パッと花開いたと思ったらパラパラと散って消えて、再び別の花が夜空に咲く。
夜空を彩る大輪の花々はどれも綺麗だけど、それを見つめる君の横顔の方が僕には眩しいと感じる。
あんまり見つめてると視線に気づかれるので目を逸らすけど、つい花火よりも見ていたくなってしまうんだ。
光に照らされる君が、あまりにも綺麗でかわいいから。
このまま時間が止まったらいいのに。
ずっと二人きりでこうしていられたらいいのに。
「…好きだよ」
その言葉は花火とともに掻き消えてゆく。
「――本日は以上をもって終了です。どなた様もお忘れ物なく、お気をつけてお帰りください」
終了のアナウンスが流れた。
「…帰ろっか」
「…そうね」
「送っていくよ」
「ありがとう」
本当は、少しでも長く一緒にいたい。
まだ帰りたくない。
そんなわがままな気持ちを押し込めながら、僕たちは帰路を辿る。
当たり前だけど、人が多くてただ歩くのも大変だ。
「きゃ…っ」
「桃!」
誰かにぶつかられたのか、よろけた桃の肩を咄嗟に支える。
「大丈夫?」
「ええ、ありがとう…」
顔を上げた桃の顔が至近距離にあった。
思ったより顔が近くて、ドキッとする。



