まだ夏も中盤だから陽は落ちていない。空は絵の具をスケッチブックに垂らしたような青に染まっていた。またシャツから覗く肌が太陽に照らされてじりじり焦げていく。
瑞己が向かう神社は高峯神社といい、渋谷駅から二つ先の代々木駅にある。付近は渋谷駅より断然落ち着いており、モダンなカフェや雑貨屋が並んでいて居心地の良い街だ。
神社の前には鉄棒のみ置かれている小さな公園がある。そこで父と逆上がりの練習をしたことをぼんやり思い出した。
鳥居は続く一本の階段の先にある。そこで瑞己は長く息を吐き、袖で汗を拭いていると耳に流れてくる音楽に、籠った現実の声が混じったーー危ない、そう聞こえた。
振り返った途端、右の頬に鈍い痛みが走った。衝撃でイヤホンがすっ飛んだ。その場でしゃがみ込むと、視界の左端にサッカーボールが写った。視線を上げると真っ青な顔をした小学生が何度も頭を下げて走ってきた。
少し土のついたボールを拾って渡すと、その少年は泣きそうな目をして何度も瑞己に謝った。まだ背丈が小さいから四年生くらいだろうか。平然なふりをしてこのくらい大丈夫、と軽く笑い飛ばす。鉄棒の側でおろおろしながら待っていたもう一人の少年のところへ返してやった。
後からじんわりと痛みが広がる。
瑞己が向かう神社は高峯神社といい、渋谷駅から二つ先の代々木駅にある。付近は渋谷駅より断然落ち着いており、モダンなカフェや雑貨屋が並んでいて居心地の良い街だ。
神社の前には鉄棒のみ置かれている小さな公園がある。そこで父と逆上がりの練習をしたことをぼんやり思い出した。
鳥居は続く一本の階段の先にある。そこで瑞己は長く息を吐き、袖で汗を拭いていると耳に流れてくる音楽に、籠った現実の声が混じったーー危ない、そう聞こえた。
振り返った途端、右の頬に鈍い痛みが走った。衝撃でイヤホンがすっ飛んだ。その場でしゃがみ込むと、視界の左端にサッカーボールが写った。視線を上げると真っ青な顔をした小学生が何度も頭を下げて走ってきた。
少し土のついたボールを拾って渡すと、その少年は泣きそうな目をして何度も瑞己に謝った。まだ背丈が小さいから四年生くらいだろうか。平然なふりをしてこのくらい大丈夫、と軽く笑い飛ばす。鉄棒の側でおろおろしながら待っていたもう一人の少年のところへ返してやった。
後からじんわりと痛みが広がる。
