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奈帆と出会ったのは小学2年生の夏休みだった。

まだ存命だった両親と祖父母に連れられて訪れたのは鎌倉にある別荘だった。

そこにいたのは、奈帆の父親とまだ5歳だった奈帆だった。

ボブの黒髪に白い肌に大きな目はまるで人形のようだと、青葉は思った。

大人たちがお茶会をしているのが退屈だったので青葉は広い庭の中を散策することにした。

ひまわりが並んでいるその場所を歩いていたら、
「あっ」

その中で奈帆を見つけた。

赤いじょうろを片手に、ひまわり柄のワンピースに麦わら帽子をかぶっている彼女はひまわりの水やりをしていた。

妖精みたいだと思いながら奈帆を見ていたら、彼女と目があった。

目があった奈帆はニッコリと自分に向かって微笑みかけてきた。

その瞬間、自分は恋に落ちたんだと青葉は思った。