「あなたがどうして私にこだわっているのかわからないけど、特に理由がないなら婚約破棄をしていいんじゃないかと思ってるの。

ただ育ててもらった恩を返すために結婚したいんだったら、あなたが私以外の本当に好きな女性と結婚した方がおじいさんとおばあさんの本当の恩返しになるんじゃないかと思うの」

そんな青葉に向かって奈帆は言った。

「僕はこの婚約を恩返しのためだと思ったことがないし、奈帆をそんな風に見たことがない。

奈帆が婚約破棄だけじゃなくて、そんなことまで思っていたことに驚いてるし、そうさせてしまった僕も僕だと思ってる。

そのためには婚約者として人間としての信用を得たいし、君に好かれたいし、愛されたいと思ってる。

君と愛し愛される関係になって結婚したい、君との間に子供が欲しいと思ってる」

「…それ、自分で言ってて恥ずかしくないの？」

私だったらゲロが出るわ…と、奈帆は呟いた。