「好き」って言ってよ！

「そ、そうだったのか…？」

そう答えた青葉に、奈帆はあからさまだと言わんばかりに息を吐いた。

「考えていなかったどころか気づいてもすらいなかったんですね。

そんな人と一緒にいて結婚したくないと思ったから、私は父に何度も婚約破棄を申し立てたんです。

なのに、父は“先代が決めた”の一点張りで応じてくれない。

私のことが嫌いだったら今すぐにでも婚約破棄をしてくれればいいのに…と、何度思ったことか」

奈帆は頭が痛いと言うように指をこめかみに当てた。

「それは本当に申し訳なかった。

君の頑張りに気づかなかったうえに、婚約破棄を考えるくらいに思いつめていたことも知らなかった。

僕が今まで君にとっていた態度が原因だったとは言え、本当に申し訳ないと思ってる」

そんな彼女に向かって青葉は謝った。